たまたまな日々・『遅フェミ』の感想など

10月1日/『黒い迷宮』だと思ったのに/くまざわ書店四条烏丸店/和田さんの『遅フェミ』
小川たまか 2023.10.03
誰でも

 ネトフリを見て『遅フェミ』を読んだ日。

※性暴力の記述があるので、読みたくない人は「くまざわ書店四条烏丸店」の見出しまで飛ばしてください。

10月1日

 6時頃起床。昨日早寝だったので本当は4時半に起きるはずだったけれどやっぱりそれはできず。6時に起きて、Netflixで『警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件』を見る。

 大袈裟太郎さんこと猪股東吾さん、通称げさっちにおすすめしてもらったから。

 30代以上の人なら2000年当時、ルーシーさんが失踪して、その家族が来日してからの連日の報道を記憶しているのではないか。

 げさっちから聞いて興味を持ったのは余罪がものすごくあったという点。今であれば、ここまで計画的な犯行を行った加害者が手にかけたのが一人だけなわけないということはわかるが、当時はそんなことを全然思い至らなかった。

 予告にもあるが、ジャーナリストの男性が「家宅捜査で出てきた証拠品からわかるだけで四百数十人…(の被害者がいる)。日本最大の性犯罪でしょ」と語る場面がある。

 犯行の様子を撮ったビデオが残っていて、さらにわざわざそのテープに被害者の名前が記されていた。だから捜査員たちは被害者の元にそれぞれ赴いたが、犯行時に薬で眠らされていたこともあって裁判に臨む意志がある人は少なく、立件されたのは10人程度。

 「日本最大の性犯罪」とは最近のジャニーズ報道でも出てきている言葉だけれど、捕まっていないだけの性犯罪加害者がどれだけいるだろう。逮捕されてもその余罪がすべて明らかにならないことの方が多いだろう。

 ルーシー・ブラックマンさん事件の犯人、織原城二は前科があり、それは公衆トイレで女装しての盗撮だったという。軽い罰金刑で済まされただろうし、その時の捜査した警察官たちは、まさかこんな事件を起こしている人物だとは思わなかっただろう。

 10月1日には四谷大塚で盗撮した塾講師に同僚の仲間がいたことが報道された。区立中学の校長の事件も余罪が疑われている。

 ジャニーズ事務所の事件はもちろんとてもひどいのだけど、あれだけを「人類史上最悪の性虐待事件」と強調するのは違うと私は思う。まだ私たちの知らない事件があるはずだと想像すべきなのでは。

『黒い迷宮』だと思ったのに

 当時の報道は記憶にあったものの、私はその後の市橋達也の事件と混同していた。市橋の事件は「リンゼイ・アン・ホーカーさん事件」だった。遺族の方に申し訳ない……。

 織原城二については報道が少ない印象があるが、一方でネットには情報が出ていて、その多くが織原が在日二世だったという点への指摘……。凶悪犯罪の犯人は日本人じゃないことを強調したい人たちの例の感じです。ため息。

 ルーシーさん事件が一審で無罪判決になっていたことも知らなくって、もっと詳しく知りたい、これは今日こそずっと積読していた『黒い迷宮:ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』を読まなければいけないな!と思い、本棚へ向かった。

 『黒い迷宮』は背表紙に大きな四文字が目立っているから、本棚の中でもどこにあるかわかりやすいんだよーう!って意気揚々と手に取ったら、なんとそれは『黒い司法』だった。別の本じゃん……。

なんで。

なんで。

  そして『黒い迷宮』は見つからなかった。買った記憶あるのに。でももしかしたら最初から間違えて『黒い司法』を買ったのかもしれない。わからない。もうわからない……悲。

くまざわ書店四条烏丸店

 気を取り直してApple Storeへ。スマホのバッテリー交換は3時間ほどで完了したが、iPadはまだバッテリー消費がそこまでではないので(82%だった)、次回ということに。

 スマホをApple Storeに預ける数時間について、私は密かに期待していた。いつも肌身離さずスマホを持っていないと不安になってしまっている私がスマホから離れるとき、いつになく集中力が発揮されるのではないかと。

 大きな期待を胸に、まずはくまざわ書店へ。

 Apple Store京都は四条通りにあってな。ここから数分の四条駅地下に入っていくところにくまざわ書店四条烏丸店があるんじゃ。

 くまざわ書店四条烏丸店はそれほど大きい店舗ではないけれど、レジ前の新刊の並べられ方が丁寧で好き。フェミ本もちゃんとフェミカテゴリに並べられ、フェミもしくはフェミに理解のある書店員さんがいるのではないかと期待しちゃう。

 便利な場所にあるもっと大きい書店もあるのだが、そちらはいまいち私の好みではなくて「ここにフェミはいない」と思っている。

 くまざわ書店で武田砂鉄さんの新刊を買おうかなと思っていたのだけど、見つからなくてウロウロしているうちに買おうと思ってまだだった本を次々に見つけてしまって、結果こうなった。

「世界」は三浦まり先生の連載を読むために買ってる

「世界」は三浦まり先生の連載を読むために買ってる

 レジで「武田砂鉄さんの新刊はありますか」って聞いたけどまだ並んでいないみたいで、9月28日発売だから全国に行き渡るのはもう少しかかるのかも。9月20日頃発売だと思ってたけど、まだ発売から数日だった。しゅんとした。

 でも四条烏丸店に砂鉄好きの痕跡を残せたのでいい。

『50代で一足遅れて〜』略して『遅フェミ』

 近くのタリーズへ。ここで買った本を読むと思うやん。

違うんだなこれが。

違うんだなこれが。

 今日はこちら。和田靜香さんの新刊『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』

 和田さんといえば2年前の『時給はいつも最低賃金 これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』がヒットして、「政治本として異例!」と言われたりしていた。

 『時給〜』は立憲民主党の小川淳也議員に取材した本なのだが、私は和田さんがTwitterで「小川さん!」って愚痴っているたびに自分のことかとちょっとビクッとする。淳也のせいだよ。

 でも大好き和田さん。いつも和田さんって5歳ぐらい年上なんだっけ?と思いきや、15ぐらい離れているのでびっくりする。歳をとるごとに、人の年齢がよくわからなくなる。

 今の私にとって、23歳〜35歳ぐらいまではみんな「若い」カテゴリで括られて同じだし、45歳〜59歳ぐらいまで「ちょっと年上」で括られている。学生時代や若い頃は1〜2歳の歳の差でも敏感だったのに不思議。でも年齢をそんな気にしなくなっているのは良いことなのかな?

必然ではあるが奇跡のパリテ

 さて『遅フェミ』はパリテが20年間続いている神奈川県・大磯町議会を和田さんが訪ねて行って、わちゃわちゃしながら次第に街の背景や歴史を知っていくお話。

 最初に議会を訪れた和田さんが女性町議たちから言われるのは「その賞賛が居心地の悪さにつながる!」「素晴らしいだけの議会なんてないでしょう?」などなど。

 全国でも超珍しいパリテの町議会だから取材はちらほらあるようで、でもいつまでもすごいすごいと取り上げられていてもね…って感じなのかもしれない。

 議会だけでなく街も見なきゃと考えた和田さんは偶然も重なって大磯町に暮らす女性たちと次々に仲良くなって、その全員と、政治・民主主義・地方自治・過去から今まで続く草の根の運動の話をしていく。

 一人と仲良くなると「この人とも会えば?」「じゃあこの人とも」ってなっていく。そのつながりの中で、20年続くパリテには、それなりの歴史と積み重ねと人から人への引き継ぎと、いくつかの運動の交わりがあることがわかる。

 和田さんと女性たちの出会い、そしておしゃべりがとにかく最高なので、このままドラマにしたらいいんちゃう?って思っちゃう。野木亜希子脚本でドラマ化希望!

 合間合間で挟まれる、和田さんの過去、湯川れい子さんに拾われてライターを始めた話や、反原発集会で出会った故人の話なども興味深い。和田さんの中でもすべてつながって今大磯町の取材をしているんだなと思う。

 大磯町議会は2019年10月に「内閣総理大臣安倍晋三衆議院議員に猛省を求める決議」を出した議会として話題になったことが出てくる。

 このときの議長は自民党の男性議員で、自民党も公明党町議も決議に賛成。自公議員が安倍さんに「猛省を求める決議」に賛成なんて、日本でそんなことあるんだね。この当時の議長さんのコメントが圧巻だった。これ聞けた和田さんすごい! すごいすごい!!!

 和田さんが出会う人出会う人みんな女性で、しかもシングルの女性が多い。女性が語る歴史って、男性が語るそれと比べて全然残っていないと思うし、政治にまつわる話だと尚更。地方自治って、議員になるならないは別としても、かなり女性が下支えをしていたところが大きいもののはずなんだけど、語り継がれていないなあと思う。だからこういう記録とても大事。

 それから、大磯町でパリテが実現され、それが20年続いてきたのは、誰か1人突出した女性がいたとか、めっちゃ理解がある男性がいたとかそういうことではなくて、複数の女性が志を持ってそれぞれの場所でこれと決めたことに取り組み、それが運よく邪魔されず地域に溶け込んで継続され、さらに複数の運動が交わる中で誰もが意見を言える空気が醸成されていった結果。

 それだけのこと?と思う人もいるかもしれないが、パリテ議会が日本に数カ所しかないことを考えると、これは奇跡みたいな話だと思う。特に「運よく邪魔されず」の部分ね……。

 以前とある場所でご一緒した与党批判に熱心なリベラルの男性が、クオータ制の話になると口を歪めて笑いながら「もっと女性に頑張ってもらわないと」と言ったのが私はもう本当に本当に悔しくって。

 政治や行政、あるいは地方自治の現場で頑張ってる女性は全国津々浦々にいたし今もいるけれど、その人たちが潰されずに活動を継続する大変さって、男性の比ではないんだわ。マイノリティの問題意識を言えば言うほど理解されない壁にみんなぶち当たってるんだわ、ずっと。

 でも和田さんの本には希望があるから、とりあえずみんな老いも若きもこれを読んで、うかうかしていると窒息しそうになる日本社会への希望を見出しましょう。

今日のももアン

朝起きて 枕元には  丸顔の アンちゃんがいて 世界も丸い

朝起きて 枕元には  丸顔の アンちゃんがいて 世界も丸い

3行日記

今日の反省 原稿書いてない

今日の感動 遅フェミ

明日の目標 原稿

急に涼しくなっちゃって、もっとゆっくりでもいいのに

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