たまたまな日々・広島高裁で判決を聞く

11月22日〜23日/判決/記者会見とフラワーデモ/宮島
小川たまか 2023.11.25
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 広島高裁で判決を聞いて、宮島へ。

11月22日

 朝から新幹線へ広島へ。広島高等裁判所で、実父からの性虐待を訴えた女性の民事裁判の判決が言い渡される日。一審の広島地裁では女性の訴えが退けられている。

 退けられた理由は、「性虐待はなかった」とされたからではない。性虐待があったことは実父も認め(回数や頻度について一部否認)、裁判所は女性がPTSDを発症したことも認めている。けれど、民事裁判での損害賠償の請求権がある20年をすぎているから、請求は認められないという判決だった。

広島高等裁判所

広島高等裁判所

 女性側は控訴審で、PTSDと診断され、その症状を性虐待の結果だと気づいた時点を損害賠償の起算点だとすれば、請求権の除斥期間には当たらないと主張した。

 幼少期から親からの性虐待に遭っていた子どもが、それが「おかしい」と気づくのは難しいし時間がかかる。思春期になって他の家とは違うかもしれないと気づいた後でも、自分の生きづらさの原因が性虐待にあると理解できたり、ましてや親を訴えたりできるまで力を取り戻せるのはもっとずっと後のことだ。

 けれど一審では女性の訴えは認められず、11月22日に言い渡された高裁の判決も同じく請求棄却だった。

 20年以上前の性被害について、PTSDの発症を起算点にして損害賠償を認める判例は過去にある。何も今回初めて原告側がとっぴな主張をしたわけではない。参考)加害者に賠償命令 札幌高裁、幼少期の性的虐待で(2014年9月25日/日経新聞)

 原告側の代理人はPTSDの専門家から意見書を取っていた。けれど裁判所の出した判決は、もっと早く原告が訴えることができたはずだというものだった。

 一般の人からして、裁判所というのはとても遠い存在だ。裁判所へ訴え出るという発想を20代や30代で持てる人の方が特殊だと思う。ましてや身内を、性虐待で訴えるわけで。

 被害に遭った側は、なんとか被害を忘れようとしたり、社会に馴染もうとしたりして20代30代を過ごす。

 ようやく自分の内面に向かい合えたり、適切な助言を受けられたりすることができた時期にもう40代になっていたとして、それは遅すぎるのだろうか。人が成長や社会への適応の過程で、どの順序で何に気づくかについて、何が普通かの基準はあり得るかもしれないが、性虐待を受けた人にその「普通の基準」が当てはまらないであろうことは、専門家でなくても想像に容易いと思うのだが。

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  • 記者会見とフラワーデモ
  • このあとは、
  • そして明くる日は、
  • 新幹線で帰ってきて

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