たまたまな日々・伊藤詩織さんの謝罪文

日本での公開が近いのかな/クマこわい/社会の淵から/『犯罪被害者代理人』
小川たまか 2025.10.27
読者限定

 クマこわい。

***

 先日、秋田在住の方とお話する機会があってクマの話をしたところ、「京都にも出ますか?」と聞かれたのです。そのときは「出ないです」と答え、内心で「京都ってそこまで山と近くないし!」と思っておったのですが、まんまと京都にも出たよ、クマ。

▼右京でクマ 目撃相次ぐ(読売新聞/2025年10月26日)

 市街地じゃん……。先日は早朝から「クマに気をつけて」ってアナウンスの車が巡回してました。クマが出るのは北の方だけだと思っていた。早く冬眠してくれるのを祈ればいいのでしょうか。

 さて。

伊藤詩織さんが謝罪文発表

 伊藤さんが自身の公式サイトで謝罪文を発表しました。全文は下記。無断撮影されたタクシー運転手の方へ向けての謝罪です。

▼伊藤詩織 謝罪文発表コメント&謝罪文

 ネット上では「対応が遅くない?」という反応もありますが、おそらくこのタクシー運転手の方との協議に時間がかかったのだろうなという印象を謝罪文から受けました。

 「ご本人の承諾を得ずに撮影したものです」と認め、「ご本人やご家族の皆さまに多大なご不快な思いをおかけすることとなりました」と家族の存在にも言及。「協議中も使用を続けたことについても謝罪いたします」と、協議中の自身の振る舞いにも触れて謝罪しています。

 これはただの推測ですが、謝罪文の公表が和解の条件に盛り込まれたのではないかなと。

 それから思ったのは、やっぱりタクシー運転手の方は怒っていたんだなと。

 元弁護団が問題提起する記者会見を行って以降、特に今年の2月からはネット上で元弁護団へのバッシングがひどかったと記憶しています。その中には、タクシー運転手が自分から映像を使うなと言ったわけではないのに、なぜわざわざ元弁護団が先回って問題提起するのかというような批判もありました。

 元弁護団の態度をパターナリズム的だなどと強く批判して詩織さんを擁護した映画監督のミキ・デザキ氏は、その原稿内で「私の考えが間違っているかもしれませんが」の注釈付きではあるものの、タクシー運転手について「しかし、彼がそれほど動揺して苦情を申し立てるとは思えません」「なぜなら、彼は映像の中で伊藤氏を助けており、そのことで彼の評判が傷つくことはないからです」と書いていました。

 私はこれを読んだ際に取材する側のおごりしか感じず、擁護にしてもとても筋が悪いと思いましたが、主にリベラル・左派の人々が、なぜかこの文章を絶賛とともに拡散していました。

 結果的には、ミキ・デザキ氏の推測は当たっておらず、タクシー運転手の方は無断撮影や使用を良しとしていませんでした。元弁護団が問題を明らかにしなければ、そのまま日本公開となっていました。詩織さんを擁護していた方たちは「ひとまず和解して良かったね」の雰囲気なのですが、当時、少なくない数の人々がタクシー運転手の方の被害を矮小化していたことについては今どう思っておられるのでしょうか。それでもやはり「元弁護団がことを荒立てなければタクシー運転手も権利を主張しなかっただろうに」なのでしょうか。

(※)付け加えれば、ミキ・デザキ氏は「彼は映像の中で伊藤氏を助けており」と書いていますが、証言したのは事実であるものの、事件当日についてはタクシー運転手とドアマンは連れて行かれる伊藤さんを助けていません。これについて非難する声がネット上ではあり、「彼の評判が傷つくことはない」という点についてもミキ・デザキ氏の見立ては外れています。

謝罪文の不思議な点

 これは産経新聞がタイトルで的確なツッコミをしています。無断撮影や無断使用を指摘された箇所はタクシー運転手の部分だけではありません。それ以外の4点はどうなったのでしょう。

 弁護士ドットコムニュースが、元弁護団の代理人を務める佃弁護士のコメントを取材しています。「全く解決しておりません」だそうです。

▼伊藤詩織さん謝罪文公表も…元代理人側「全く解決しておりません」 性被害ドキュメンタリーで映像使用めぐり(弁護士ドットコムニュース/2025年10月27日)

 この記事は記者の質問に応えるかたちで佃弁護士が最低限のコメントを答えていますが、元弁護団がこうしてコメントを出すことで、また以前のようなひどいバッシングが起こらないか心配です。「この映画は公益性があるのだから」とか「弁護団はこの映画の価値をわかっていない」というような意見を見るのですが、公益性があるからとか、元弁護団だからといった理由で平然と口をふさごうとする人が恐ろしいです。

 伊藤さん本人によるFacebookによれば、アメリカでの上映ツアー&トークはとても評判が良いようです。また、11月30日には大分県佐伯市で講演があり、伊藤さんは市長とトークセッションが告知されています。日本での講演は、騒動以来初めてではないでしょうか。

 講演に出るならキャンセルした記者会見を開けばいいのに、とは言いません。この問題について記者会見に出ることが負担なのは誰にでもわかります。性暴力サバイバーかどうかという話ではなく、誰だってわざわざそんな会見に出て行きたくないでしょう。

 ただそうであるならば、代理人を通じてせめて「残りの点は修正するのか否か」「修正されていないバージョンはどこでいつまで流れていたのか」「2月に修正を約束してから、海外では長い間、修正されていないバージョンが流れていたのはなぜか」などを説明したらいいと思います。詩織さんを応援している人は多いので説明を好意的に受け止める人はいるでしょうし、リベラル・左派界隈ではむしろ、詩織さんの問題を言おうとする人のほうがSNSでボコられます。

 詩織さんを応援したいがために彼女を神格化したり、元弁護団を悪く言い立てたりする必要はないということが理解されるといいのですが。引用:「私が本件について許しがたいのは、侵害された意思や権利を、軽視する者たちである。あたかも、些末(さまつ)なことで伊藤氏の活躍が阻害されようとしているかのように語る者たちである。決して、伊藤氏本人ではない。」(杉山大介弁護士/2025年3月9日)

▼簡単なまとめです。フランスで販売されているDVDは修正されていなかったことに触れています。

▼過去の有料記事です。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、675文字あります。
  • 社会の淵から
  • 『犯罪被害者代理人』
  • 黒猫の日

すでに登録された方はこちら

読者限定
たまたまな日々・「もっと働かせろ」じゃなくて「賃金アップはよ」
読者限定
たまたまな日々・キングオブコントに見た忖度
サポートメンバー限定
たまたまレビュー#40 『小さな嘘つき』
読者限定
たまたまな日々・高市、ワークライフバランス捨てるってよ
読者限定
たまたまな日々・「男性問題」って言えよ
読者限定
たまたまな日々・歯磨き粉の話など
読者限定
たまたまな日々・スマホが壊れて、初秋
サポートメンバー限定
たまたまレビュー#39 『縁を結うひと』