たまたまレビュー#17『八日目の蝉』

約20年前の作品、なんで今? 答え:オーディオブックが良かったから
小川たまか 2024.07.31
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たまたまレビューでは、書籍・漫画・映画・ドラマなどのレビューを思ったままに書いていきたいと思います。大体週末の午後に更新します。

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今週の一冊

▼小説『八日目の蝉』(角田光代)

オーディオブックで聞いた

 amazonのオーディオブック(月額1500円で聞き放題)に入っているので、ウォーキング&家事中に聞いた。オーディオブックは便利だが、小説を聞いているとついつい集中しちゃうので、交通量の少ない道を歩くようにしている(逆にちょっと難しい学問の本だと集中力が切れて歩きながら別のことを考え始めてしまうことがある)。面白いのが、後からストーリーを思い出そうとすると、そのときに見ていた風景とセットでよみがえること。人の記憶って面白い。作品にちなんだ場所を巡りながら聞いたら、さらに記憶の中で楽しめるのかもしれない。

 『八日目の蝉』は、主人公が逃避行するので、舞台が東京・名古屋・岐阜・小豆島と移っていく。特に小豆島が強く印象に残る土地として描かれている。来月ちょうど小豆島に行くことになったので、現地でその部分だけ聞き直してみようかな。

 今回、オーディオで聞いて良かったなと思う理由は、主人公の野々宮希和子のパートの大塚寧々さん、希和子に誘拐される秋山恵理菜のパートの蓮佛美沙子さんが大変達者だったから。オーディオで聞いておきながらなんだけれど、私は小説の朗読って若干苦手で、なぜならいつもの読書は「自分の声」で読んでいるけれど、朗読だと「他人の声」だから。これはもうわがままでしかないのだが、違和感を覚えながら「でもまあこういうものだな」と思って聞いてる。

 でも今回、大塚さんの朗読が巧みすぎて、わー、ずっと聞いてたいと思った。これは好みの問題もあると思うけれど。大塚さんは基本は希和子の語りを演じているのだが、途中で他のキャラクター(タクシーの運転手とか、女友達とか、子どもとか)のセリフをしゃべる部分もある。声を低くしたりしてトーンを変えて演じるのだが、それに無理がないし、力みもない自然な感じで。これまで大塚寧々さんはベテランの俳優さんだけど、すごく演技派という印象はなかった。ごめんなさい、すごい演者さんだわ。

 『八日目の蝉』はベストセラーであり、これまで何度も映像化されている。

 希和子と恵理菜の組み合わせを、それぞれ【映画版】永作博美、井上真央、【ドラマ版】檀れい、北乃きいが演じている。私は映画もドラマも未見なのですが、見たくなってしまった。今後もリメイクとかで見たいな。そう思わせるのは原作のそれぞれのキャラクターに芯があり、俳優さんが演じがいがあるからなのでしょうね。

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