【たまたま通信】大富いずみ監督『SHIBUYA,TOKYO 16:30』の良さと、その受け止められ方

「女性監督ならではの感性で作られた特徴的なシーン」……だと……?
小川たまか
2021.05.15
読者限定

現在ネット上で視聴することができる大富いずみ監督のショートフィルム(約15分間)が何を描いているかってことと、ネットニュースでの報じられ方がヤバジャパン!ってお話を書きたいと思います。

今回の記事を読む前に、ぜひ次の手順を踏んでいただけると、私が辿ったのと同じような感想を得られるかもしれません。

(1)長田杏奈さんのおすすめツイートで知る

→ぐうたらこさんも推奨してたし!

(2)ネット上で『SHIBUYA,TOKYO 16:30』を見る

www.shortshortsonline.org

→メアド登録すれば無料で視聴できるよ! 

(3)大富いずみ監督ってどんな人なんだろ〜とGoogleかYahoo!検索する

(4)検索すると上の方に、Yahoo!配信記事が表示される。その中の「毎日キレイ」の記事をクリックする

news.yahoo.co.jp

→はい、今どんな気持ち???? フェミのあなたはどう思う????

うざくてごめんなさい。じゃあ順番に整理していこう。私の感想はこんな感じです。

(1)長田杏奈さんのおすすめツイートで知る

→長田さんおすすめってことは見なければ!となる。でも多分ちょっとツラめな感じなのだろな〜とも思う。

(2)ネット上で『SHIBUYA,TOKYO 16:30』を見る

→15分間が泥のように長く感じる。プロデューサー男・鳥海のキモさ、セコさ、ねっちょり感、耐えがたし。最後に出てくるスタッフの男女から、蒼のほうが「こいつ女使って取り入ったんだろうな〜」って目で見られてるのもあるある過ぎて地獄みがある。

大富いずみ監督がインスタで書いていたコメントを知る。

@izumiohtomi
@izumiohtomi

何かしらの力関係を無意識に利用して、満たされない自分の何かが相手に受け入れられることを望むこと。何かしらの力関係の中で、無意識に相手を支配し、コントロールしようとすること。自分のその状態に完全に無自覚であること。(略)仕事の場だけではなく、友人、親子、夫婦、恋人、クラスメイト、チームメイト……あらゆる関係の中で、そのどれも、いつでも誰にでも起こり得ることなのだと思います
@izumiohtomi

昨年から法務省で進められてきた性犯罪刑法改正のための検討会の中で、「地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方」についての議論が行われたことを知っているのは、当事者・支援団体の関係者やフラワーデモに関心のある人など一部に限られているかもしれない。

でも、大富監督がインスタコメントで指摘していることはまったく同じ話。「地位関係性を利用した性暴力」っていう言葉を使わずに同じことを感じて表現している人がいるっていうのは、私にとって希望です。

知ってる人にとっては耳タコだと思いますが一応繰り返すと、現在の強制性交等罪や強制わいせつ罪には「暴行脅迫要件」っていうのがあって、行為が行われたときに暴行や脅しがあったことを被害者側が立証する必要がある。

だけど、仕事で関係のある人など知り合いから性暴力が行われるときって、殴ったり押さえつけたり、「殺すぞ」みたいなわかりやすい脅しが使われることばかりじゃないわけです。プロデューサーの鳥海がやってるみたいに、作品づくりに協力することと引き換えに俺と関係を持ったらいいんじゃないの〜、みたいなことが暗に仄めかされることはある。そして拒否すれば道が閉ざされる。

けれどそういう「性接待の強要」が刑事事件として裁かれることは、まずない。被害者が沈黙を選ばされるし、加害者は「男と女の関係(恋愛)を持ちかけただけ」と思っている。

暴行脅迫がなくても、地位関係における権力勾配によって相手を黙らせることはできるんだよ……って話を法律に落とし込むのはすごく難しいことなのですが(2017年の改正ではさまざまな地位関係性のうち、親など監護者による18歳未満への性行為だけが暴行脅迫がなくても良いと認められた。現状これのみ)、そうであるならば、我々は表現において、黙らされた側の視点を描いていくことが必要だ。

だってこれまで、プロデューサー鳥海側の視点でもって描かれたものが市場に流布し、それは「男と女のエロティックで打算的な関係」とか「自分の体を使って業界でのしあがる女」の話に変換されてきたのだから。

(3)大富いずみ監督ってどんな人なんだろ〜とGoogleかYahoo!検索する

当然、大富いずみ監督がどんな人なのかに興味関心を持つわけで。

(4)検索すると上の方に、Yahoo!配信記事が表示される。その中の「毎日キレイ」の記事をクリック

そうすると出てきたのがこの記事。

news.yahoo.co.jp

「今回配信される作品についてのトークでは、剛力さんは大富いずみ監督の「SHIBUYA,TOKYO 16:30」が最も印象的だったと語り」ってとこまで読んで、「おお、ゴーリキさんいいね!」って思う。しかし……。

「はっきり言わない二人のもどかしさや、せっかく前に進めそうなのに進めないという苦しさが今の何かを象徴していると感じました」(剛力さんのコメント)

えっと、あれれ……。もしかしてもしかするとだけど、剛力さんはこれを恋愛の話だと思ってるのかな? プロデューサー鳥海側なのかな……。

残念に思うが、コメントが短過ぎて真意がわからないので保留。

LiLiCoさんはさすがに「男性のプロデューサーが弱い女性を利用しているストーリー」と指摘してる。

けれどその後の、ライターのまとめ方。

「…と、女性監督ならではの感性で作られた特徴的なシーンについて語った。」

これは…なんということ……。

はい、ここで、長田さんのツイートを振り返ってみましょう。

そうだよ、映画の中にも、このセリフあったじゃない。鳥海が「面白いよ、こういう表現を女性がするというのは」って言って、蒼がなんとも言えない表情をするシーンが。

この記事を書いたライターさんは、「女性ならではの感性」って言葉がいかに時代遅れであり、その言葉にこそ、あらゆる現場から女性を排除してきた空気が込められていることをわかっていない。松田青子さんの小説集『ワイルドフラワーの見えない一年』にある「男性ならではの感性」を100回読んだ方がいい。そしたら二度とこんなこと書けないはずである。

「映画監督を志す助監督の主人公が、念願の機会をまえにしてさまざまな葛藤を抱く」って紹介文も、あらすじだけ見て書いたのだろうな〜って感じであるし……。

同じライターなので、こういう記事を1日に何本もパソコンの前で書かなきゃいけないくて流れ作業になる……作品を見ていない状況で書かなくてはならんぐらいの安い賃労働……みたいな事情はわかるんだけどやはり作り手へのリスペクトを感じない記事は残念。ってことで、ライターさんにこういう仕事させないでくださいっていうことを運営元に言いたいよね。

「毎日キレイ」の運営元は株式会社MANTAN(東京都千代田区)。毎日新聞社が100%株主。役員は全員男性でした。ハハッ。「毎日ヒゲソリ」でも作ってろよ!

こういうウェブメディアに負けず、フェミはフェミの口コミで『SHIBUYA,TOKYO 16:30』を推していきたいと思いました。

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