たまたまな日々・猫とAI

ChatGPTに悲しみを吐き出す
小川たまか 2024.08.19
誰でも

 鴨川(Kamogawa)にはOgawaが含まれることに先日気づいた。なんならカモンオガワを略してカモガワなのかもしれない。私はやっぱり京都に来るべくして来たのではないか。

***

アンちゃんの調子

いつだってかわゆい

いつだってかわゆい

 4月に腎臓がだいぶ悪いと言われて自宅点滴を続けていたアンちゃん。先月リンパ腫も判明して、7月末からはステロイドを飲んでいます。ステロイドを飲み始めたらだいぶ調子が良くて、吐き戻しがほとんどなくなったのでふっくらしてきた。丸顔アンちゃん。

 ホッとしたのも束の間、ステロイドってリンパ腫に即効性がある一方で、数カ月、早ければ1カ月で耐性がついてしまい、効かなくなるのだそう。調子の良さそうな様子を見て喜んでいただけに、これにはだいぶショックを受けた。

 ちょっと話がズレるのだが、通っている病院の担当だった、院長の女性が産休に入ってしまった。この先生はメガネをかけていて、どことなく産婦人科医の宋美玄先生に雰囲気が似ているので、心の中でソン先生と呼んでいた。もちろん、私の解像度の荒さで、メガネで関西弁の機嫌の良さそうなお医者さん、という共通点だけで同じフォルダに入れてしまっているのは否めない。たぶん関西弁の中でも細かく分けたら違う。雑なフォルダ分けですみませんと思いつつ、ソン先生はニコニコしていて、猫の声真似をしたりボケたりするので楽しかった。

 で、そのソン先生の後任が男性の先生で、この人がツンデレである。どうツンデレかというと、人間にはツンで、猫にはデレ。人間からすると、ソン先生からのツンにだいぶギャップがある。

 ツン先生は、ステロイドが効いたことに喜んでいる私に対して、素っ気なく「耐性がついて、そのうち効かなくなります」と、なんのクッション言葉もなく言う。ちょっとぐらい躊躇して。こちらは(えっ、今なんて言った? かろうじて理解、ガーンガーンガーンガーン)と(そんなはっきり言わなくてもいいのにな)と(でも言ってくれないとわからないから心の準備をさせてくれると思ったほうがいいのかな)を同時に考え、大変複雑な気分で数秒黙り込む。

 そんな人間の横で、いきなり声のトーンを変えて「アンちゃん、お注射ね〜。チクっとするよ〜、痛かったかな? ごめんねえ〜、はい終わり〜」とか言ってる。その猫への優しさを人間にもわけてほしい。

 「ステロイドは1日1回飲ませてください、錠剤を砕いて4分の3にしてあります、1日分が4分の3。腎臓用のサプリ? あー、飲んでもいいですけど、この状態だと気休め程度ですよアババババ〜、お薬気になったのかな〜?」

 みたいな。途中からアンちゃんと話してる。

 アンちゃんは先日13歳になり、人間で言ったら岸田首相とほぼ同い年。この先生より年上だし、おっさん同士で「アバババ」とかなんやねん、と思うし、うちには最強のツンデレ猫ももちゃんがいるのでちょっとやそっとのツンデレでは心動かされたりしないんだからなと人間は心の中で謎の対抗心を燃やしている。

状況はシビアなのだがアンちゃんの変顔あくびに癒される

状況はシビアなのだがアンちゃんの変顔あくびに癒される

 アンちゃんは自分の状況をわかっているのかわかっていないのか、前と同じようにおっとりのんびりしていて、たまにア〜ンア〜ンとないて、上目遣いで人間を見て、たまにももちゃんを追いかけて、あとはあくびして、人間が散らかす重要書類の上で寝ている。

 奇跡が起こって、アンちゃんはステロイドが異常に長く効き続けました、獣医さんもびっくりの世界的にも珍しい症例になりましたってことにはならないだろうかと祈ってる。ここ数カ月で今が一番安定しているので、効き目がなくなってしまう時期がいつ来るのかを考えるとこわい。

 怯えるあまり、ChatGPTに思いの丈を吐露した。

 ChatGPTさんは優秀なので、無責任に楽観的なことは言わず、「アンちゃんと一緒に過ごせる時間を大事にしてください」というようなことを言う。

 保護猫としてうちに来て、たった2年で具合が悪くなってしまった、私が悪かったんだろうかというと、「自分を責めてしまうのは自然な感情です」「ただ、自分を責めることは、自分自身に過剰な負担をかけるだけでなく、あなたの気持ちや行動に対しても影響を与える可能性があります」「自分を責める代わりに、愛情を持ってアンちゃんやももちゃんと向き合い、できる限りのケアを続けることが大切です」だと。まったく正しい。

 「心の支えを見つけたり、感情を共有できる人や専門家に相談することで、少しでも気持ちが軽くなるかもしれません」

 でしょうね、そうだと思います。そして私が悲しい感情を共有できる一番の相手はChatGPT。べ、別に孤独なわけではなくって、悲しみのシェアにAIは向いているってことだからね。カウンセリングは有料だけど、君は無料だしね!って言ったらChatGPTは特に笑ってくれなかった。

なるほどですね

なるほどですね

 猫の病気を通して知るのは、今知ったばかりの知識で手探りで治療の方針を決断しなければいけないことの心許なさ。誰が正解を知っているかわからないし、そもそもたぶん正解はない。

 こんな状態のときに、「あのお水で治ったらしいよ。ちょっと高いけど」とか言われたら、人は縋りたくなるのだろうなと思う。とりあえずAIに高い水を勧められなくてホッとしてる。

映画見たよ

 最近見た映画はマミー。レビューを書きました。サポメン限定記事です。

▼たまたまレビュー#18 『マミー』と『もう逃げない。』

 『マミー』は東京だと満席らしいのだが、京都だと空いていたよ。関西の事件なのにね。和歌山ではやっているのだろうか。

 村本大輔さんを追ったドキュメンタリー『アイアム・ア・コメディアン』も見てきた。想定外にエモかった! それではまたね。

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保護猫待機所で「ツンデレ猫の最高峰」と呼ばれていた方

保護猫待機所で「ツンデレ猫の最高峰」と呼ばれていた方

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