たまたまレビュー#13 『私のトナカイちゃん』 

被害者は加害者を憎みきることができるのか
小川たまか 2024.05.30
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たまたまレビューでは、書籍・漫画・映画・ドラマなどのレビューを思ったままに書いていきたいと思います。大体週末の午後に更新します。←今月全然こうなってなくてごめんなさい。

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今週の一本

▼私のトナカイちゃん|Netflix

簡単なあらすじ

 売れないコメディアンのドニーは、元カノのお母さんの家に居候中。ある日、働いているバーに座った中年女性のマーサに紅茶を出したことから、マーサのストーカーが始まる。マーサは弁護士だと名乗るが、バーでは注文せずに水を飲むだけ。送られてくるメッセも誤字ばかり。ドニーを「私のトナカイちゃん(Baby Reindeer)」と呼んでつけ回す。ドニーは鬱陶しく思いつつも、彼女を完全に拒絶することはできない。その背景には……。これは実話で、ドニー本人が脚本・主演を務めている。

見たきっかけ

 信頼している辛口フェミの友人からLINEでおすすめされたことがきっかけ。「ネタバレになるから詳しくは言えないけれど見てほしい……、トナカイつながりだし!」とのことだった(私のYahoo!ニュースエキスパートの有料記事タイトルは「トナカイさんへ伝える話」)。

 もしもおすすめされず、自分でなんとなく見始めたドラマだったら最後まで見なかったかもしれない。実話ということもあってか1〜3話までは若干冗長に感じたし、ストーカー → 我慢する → ストーカーが激しくなる → 注意する → マーサがしょげる → 気の毒に思ってしまう → その感情につけ込まれる、の繰り返しがあり、実際に(特に女性から男性への)ストーカー被害とはこうやって深刻化していくものであるだろうなと思いつつも、だからこそ見ていて苦しい。

 また、ドニーの劇場での人気のなさも、こちらの心がえぐられる。コメディアンじゃなくても、「プレゼンが全然ウケなかった」「学生時代の発表が今も黒歴史」っていう人はそこそこいるんじゃないだろうか。また、たとえそういう過去がなくても、見ていてつらい。

 欧米のお客さんってコメディアンやパフォーマーに対して辛辣ですよね。日本の「芸人」とは少し違って、英国ではコメディアンが「時事批評家(知識人枠)」として見られるからということもあるから……? 義理で笑ってくれるとか絶対ない雰囲気(義理で笑われてもつらいが)。

 見る前にネタバレしない方がいい作品なのかなと思うので、以下、「少しネタバレ」「かなりネタバレ」「最後までネタバレする感想」の順番で書いていきます。どこまで読むかはあなた次第。

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