たまたまな日々#34 『国宝』
たまたまレビューでは、書籍・漫画・映画・ドラマなどのレビューを思ったままに書いています。
だいたい週末の午後に更新します。
今週の一本
▼『国宝』(李相日監督)
歌舞伎のこと
私は大学院で近世文学(江戸文学)の専攻でした。洒落本の研究をしていました。同期も先輩も歌舞伎を結構見に行っていて、研究室でも時々今日は何を見てきたって話が出ていたんだけど、私はといえば当時も今も歌舞伎に関心を持ったことがない。見に行ったことがあるかどうかも記憶にないぐらい。
理由は敷居の高さですけど、相撲にしても歌舞伎にしてももともと庶民の文化だったものが今やお高くなってしまっていることに戸惑いがあるし、そして男だけの場所って心のどこかで思ってしまう。わかるよ、それが文化であり伝統だっていうのはさ。しかし「国技」とか「国の宝」とか言われてるものが女人禁制なのはやっぱり心の一部分が冷えていく。
『国宝』は冒頭で歌舞伎についての説明が短く入る。江戸時代に始まり、その後「風紀の乱れ」を気にした幕府によって男性だけが演じることになったと。なんやねん、風紀の乱れって。その5文字に要約された背景を考えずにはいられないよ。
なんてつらつら書きましたけども、映画『国宝』はね……、すっごく良かった。極上エンタメであった。今後しばらくは好きな俳優さんを吉沢亮っていうと思う。はあ〜(思い出して感嘆のため息)。私は李相日監督の作品が好きなんだと思います。