たまたまな日々・政治家の啓蒙によって女性が「産もう」とはならない
ていうかさ。
政治家の出産系失言に関して毎回毎回思うんですけど、この人たちは女性が一人で「産もう」と思えば産める生き物だと思っているのだろうか。事実婚も婚外子も疎まれてしまいがちなこの国で、「出産適齢期」までに交際相手の男性を結婚する気にさせ、数十年にわたる未来まで家庭環境をそれなりに整える展望を持つことを当たり前のように女性に課している。
女性に「若いうちに産め」というのは、男性に対しては「20代のうちに妻子を養えるようになるのが男の甲斐性」と言っているのに等しいが、そちらはほとんど政治家は言葉にしない。若い男性に遠慮しているわけではなく「男はゆっくりキャリアを積んでヨシ」もしくは「ぶっちゃけ優秀な男だけ遺伝子残せばいい」なんじゃないかと思う。
▼参政党、神谷宗幣代表の街頭演説、問題の箇所(※太字は筆者)
そして経済がダメだから、人口も減りますよ。去年89万人減ったんですよ人口が。1年で和歌山県がなくなったようなもんですよ。すごい勢いです。子ども全然生まれません。だから参政党は、少子化にも、ものすごく力を入れていきます。今まで間違えたんですよ。男女共同参画とか。
もちろん、女性の社会進出はいいことです。どんどん働いてもらえば結構。けれども、子どもを産めるのも若い女性しかいないわけですよ。これ言うと差別だという人がいますけど、違います。現実です。いいですか。男性や、申し訳ないけど高齢の女性は、子どもは産めない。だから、日本の人口を維持していこうと思ったら、若い女性に、子どもを生みたいなとか、子どもを産んだ方が安心して暮らせるなと、いう社会状況を作らないといけないのに、働け働けってやりすぎちゃったわけですよ。やりすぎたんです。
だから少しバランスを取って、いや大学や高校を出たら、働いてもいい、働くこともいいし、家庭に入って子ども育てるのもいいですよと。その代わり、子育てだけだったら収入がなくなるから、月10万円、子ども 1人当たり月10万円の教育給付金を、参政党は渡したい、というふうに考えています。
▲演説、引用終わり
出たよ、女性が「社会進出」したから少子化になった論。後段で「働くこともいい」と言ってますけど、本音は「働け働けってやりすぎちゃったわけです」でしょ。そもそも女性に対して「働け働け」なんて圧はそんなないぞ。システム自体がまだまだ女性が働き続けづらい状況なわけで、働き続けたくても断念する女性も多い。
給付金は聞こえはいいけどそれ以前に、働ける人は働いて普通に稼げるようにしてほしいし、何らかの事情で働けない人が後ろめたさを感じずに生活保護や福祉を受けられるようにしてほしい。生活保護や福祉を普段は目の敵にしている人がこういうときはコロっと「出産するだけでお金を出す」と言ってるのが恐ろしい。生産性〜〜。
「高齢の女性は子どもが産めない」はただの事実と言っている人がいるけれど、まず「単なる事実」を政治家があえて口にすることの意味を考えてほしい。たとえば「後期高齢者は生い先短い」と政治家がわざわざ言いますか。それは綾小路きみまろとかの仕事でしょ。(ちなみに、男性と高齢女性を等しく「産めない」で括っているのも気になった。)
そして報道では「高齢女性は産めない」が先行しているが、少子化を男女共同参画のせいにしていることと、出産と育児をセットにして女性マターとしていることの方が参政党の本質がうかがえると思う。
全文を通せば、若い女性は四の五の言わずにまず産めよ、と言っていることは明白。
これもいつもいつも思うことだけれども、政治家のおじさん(たまにおばさんも)たちは、なぜ自分たちが「若い女性は早く産まないと!」と言えば、女性たちが「そうですね……」となると思っているのだろう。
彼らは政治家が「国のために産め」と啓蒙すればそうなる社会を心の底から望んでいるように見える。個人の自由意志なんてもってのほかで、男も女も、国のためにいつでも兵隊と子産み隊になるよう求めているように。
参政党をなぜか自民党に対抗する政党と思っている人が一定数いるようだが、そもそも男女共同参画が「男女平等」ではなく「共同参画」みたいな回りくどい言い方になったかといえば自民党の保守派が文句言ったからだよ! つまり自民党保守派と似ている部分があり、さらにトンデモなのが参政党だよ、と私は思っています。
私のthe letterを読んでくれている方で「参院選は参政党に投票しようかな」と思っている人はまずいないと思うけれども(もしいたらコメント欄にコメントください)、参政党の支持率の伸びがこわいのでこうやって書いておこうと思いました。自民党さん、「なんとなく自民層」が参政党に流れないようにホールドしておいて……それが今の存在意義……などと、自民党に投票したことのない私が初めて思いました。しかし自民党が勝てばうれしいわけではない。何この地獄。
政治家の出産系失言を聞くたびに「産んでなくて良かったな」とすら思うってことは『たまたま生まれてフィメール』にも書いていますのでぜひ。
【追記】いったんこのletterを最後まで書いたところで知ったのですが、神谷代表(47歳)は2017年に13歳年下の妻と結婚し、自身が41歳で第1子をもうけたらしい……(現在は3人の子持ち)。そうかやっぱり、「女は早い段階で人生設計するべきだが、男のキャリアはゆっくりでもOK(なぜなら若い妻と結婚すればいいから)」って人なんですね。
さて。
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