たまたまな日々・最近の本
できれば2年間ぐらい精神と時の部屋に入って本だけ読んでいたい。
「夷川餃子なかじま」っていうお店の黒炒飯が好きで、ときどき一人で食べに行ってます。夏期限定で素麺の上に冷たい餃子を乗せたメニューがあって、先日は「そんなお腹空いてないから今日はこれとハイボールでいいかな」って思ったんだけど、到着からものの1分で食べ終わってしまい全然足らなくて、結局焼き餃子一人前と炒飯も追加しました。素麺っておいしいけどアイスと同じぐらい食べた瞬間にどこかへ消えていきませんか? 私だけ……? でも今週は小豆島に行くから、おいしい素麺を買って帰ってくるんだ!
さて今日は、最近読んだ本の紹介。
●『言えないことをしたのは誰?』(さいきまこ/現代書館)
読まないとな〜とずっと思っていたんだけれど、手元に到着してからもしばらく開くまで時間がかかった。私は性被害に関するフィクションをよく読んでいるとか、耐性があると思われがちなのですが、案外そうでもなくって。仕事で書評とか頼まれた場合はすぐ読むんだけど、そうじゃないとわりと腰が重いです。
特に未成年が性的グルーミングの被害に遭うフィクションの場合、読む前からずーんとなります。読後感が予想できるからかもしれない。
あと、別に性暴力にまつわるものでなくても、たいていのフィクション(小説・映画・漫画)は心が揺さぶられるから、気合いを入れて臨まなければならないところがある。最近はノンフィクション・評論・エッセイの方が気軽に手に取りやすいです。よく「若い頃の方が感受性が豊か」って言うけれど、私は一概にそうとは言えないと思っていて、10代20代の頃は平気で読めていた漫画や小説が、この歳になるともうなんか心が轟々ざわざわして、受け取ってしまう衝撃が当時の比ではなくてつらいみたいなことが結構ある。これは心の襞が増えたからのような気もするし、当時は「フィクション」として読めていたものが、現実と生々しく接続されて読めてしまうからなのかもしれない。
ということで、『言えないことをしたのは誰?』を開くまでに時間がかかった私ですが、読み出したらページをめくる手が止まらず、一瞬でした。やっぱりすごいな、フィクションって。本当にすごい。さいきまこさんがすごい。つらい展開だとわかっていても続きを読みたくなるストーリーになっているし、性暴力被害(あるいは加害)についてのさまざまな知識が無理なく落とし込まれている。
※ここから多少のネタバレがあります。
中学校の養護教諭である莉生が、一本の電話を受けたことをきっかけに教師による性暴力を知ることから始まる。莉生は被害当事者に直接会い、現在の状況を知るのだけれど、そうではない他の教師にはその深刻さがまったく伝わらない。まさかうちの学校で「性暴力」なんて起こるわけがないと思っている。これは本当に、被害当事者の話を聞いた人とそうではない人(聞く前から信じない人)の差としてリアルだなと思った。
そして一人だけ被害の実態を知っている莉生が孤立していくのもリアルだし、彼女のある失敗も、性暴力の支援に関わる人にとって決して人ごとではないリアルだと思う。
私はこの漫画を中学生か高校生の頃に読みたかったと思うし、現代の中高生あるいは大学生が読んでくれたらいいなと思う。性暴力被害の漫画なんて中高生が手にとる?って思うけど、むしろ読みたいジャンルだと思う。10代は「タブー感」があるものに惹かれるし、暴力や性にも惹かれる。あの当時の自分なら、ここに描かれていることをスポンジのように吸収すると思う。そしてその後の人生の指針の一つになったと思う。
高校生の頃の同級生で、中学校時代の塾の先生と付き合っている子がいた。彼女とそれほど親しくなかったからよくは知らないけれど、噂話ではその塾の先生は、他の生徒にも手を出していて、「浮気」したから別れたのだそう。当時は、大人と付き合っている同級生のことを「大人だな」と思うばかりだった。
けれど自分が大学生になった途端、「(中)高校生に手を出す成人、ヤバい」に感覚が変わった。あの感覚の差は自分でも不思議。中高生の頃はなぜか、「大人と付き合う同級生」のことばかり見えていて、「未成年と付き合う成人」の姿が見えていなかった。中高生の頃は「自分は大人とそんなに変わらないし、なんなら大人よりよくものが見えている」ぐらいに思っている。自分が成人してみて初めて、中高生がどんなに幼く見えるかがわかる。自分一人で行ける範囲の狭さは、いざというときの逃げ場所の選択肢の少なさと同じ。そんな子どもを大人が手懐けることが、いかに容易いか。大人に管理され、保護されているうちは、なかなかそれがわからない。わからないようにされている、のかもしれない。
現代の中高大生が、一人でも多くこの漫画と出会えますように🙏
●『データから読む都道府県別ジェンダー・ギャップ あなたのまちの男女平等度は?』(共同通信社会部 ジェンダー取材班編/岩波ブックレット)
国別のジェンダー・ギャップランキングも大事だけど、国内でも地域によって結構差があるので、それを見て考えるのも大事だよね、というところから始まった調査。「行政」「教育」「政治」「経済」の4つの指標から、47都道府県のジェンダー・ギャップを読み解く。
例えば、私の夫は島根県出身なのですが、法事などで帰ったときに男性が子どもの面倒を自然に見ている様子を見かけたことが何度かあったりして、なんとなく男性も育児に積極的なイメージがあった。で、調査結果の中の「共働き夫婦の家事育児時間の男女比」を見ると、島根県は全国3位! 男女の家事育児時間の差が少ない県であると。
やっぱすごいって思ったんだけど、しかしそんな島根県でも、1日の家事育児時間は男性56分、女性234分。うええええ。これ「共働き夫婦の」ですからね。ひええええ。ちなみに、都市部では差が少ないのかと思ったら大阪府は46位(男性44分、女性261分)。最下位は、あえてどこの県かは書かないけれど、男性36分、女性250分でした(知りたい人は読んでみて)。
ちなみに島根県の隣の鳥取県は「都道府県庁の管理職の女性割合」が最近ずっと1位。これは、片山善博元知事が30年前から取り組んできた結果として、最近よくいろんなところで記事に取り上げられている。島根県はお隣につられてなのか、同割合が4〜6位で推移している。
本書を通して私が受け取ったメッセージは、「女性のトップや管理職が増えることがジェンダー・ギャップ解消の早道」「しかしそうであったとしても、30年はかかりそう(なぜなら女性トップや管理職を増やすための地道な取り組みの成果が出るまでそのぐらいの時間がかかるから)」でした。これを希望と受け取るか、絶望と見るかはあなた次第。若い女子は日本バイバイでもいいと思うよあたしゃ。スカートの裾を踏んでくる人の意地の悪さが尋常ではないので。