たまたまな日々・新潮社前でのスタンディング

#私が好きだった新潮社の本/怖い話してもいい?/瀬戸内国際芸術祭/本屋ルヌガンガさん/祝・こたつ1歳
小川 2025.09.02
読者限定

 今年も残すところ約120日。

***

新潮社本社前スタンディング

 9月1日、東京・神楽坂にある新潮社本社前での抗議スタンディングへ行ってきました。週刊新潮の巻末コラムで、作家の深沢潮さんらが名指しされ、「日本名で日本人をあたかも内部告発するような言い方は素直には聞けない。はっきり外人名で語るべきではないか」「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」などと書かれた件。

 新潮社はこのコラムを書いた高山正之氏の連載を打ち切ったけれど、深沢さんが代理人弁護士を通じて送った質問にははっきりとした回答をせず。

 ↓やり取りはこういった感じ

【深沢さん側質問】

(1)本件コラムの内容につき、「差別的かつ人権侵害に当たる」との認識を持っているか否かについて回答頂きたい。

(2)本件コラムに対する批判及び反論をするためのスペースの「分量や方法」について具体的な提案を頂きたい。※深沢さん側は、当初8ページの紙面を割くことを希望。

【新潮社回答】

(1)「筆者によれば、当該コラムの主眼は「朝日新聞の報道姿勢を問うたもの」であり、編集部もそのように読み取り、掲載に至りました。しかしながら、「差別的かつ人権侵害に当たる」というご指摘、ご批判については、真摯に受け止めており、そのような文章を掲載した責任を痛感しております。」

(2)「2ページを提供する」という回答。

 深沢さん側は新潮社の(1)の回答を見て「『差別的かつ人権侵害にあたる』との認識を持っていたかにつき回答をしないとの姿勢」と判断。出版に関わる新潮社との契約を解消し、版権を引き上げる予定に。また、(1)の回答に失望。「もはや新潮社の媒体で本件コラムについての批判及び反論を展開する意欲も喪失」したことから、(2)の要求は取りやめに。

 この発表(8月27日)につけられた深沢さんのコメントは↓でした。

私の気持ちが傷ついたのは、コラムが差別的で人権侵害にあたるからです。新潮社として差別や人権侵害への認識に向き合わないことに、絶望しました。これまでのやりとりに疲弊しております。

 新潮社の回答を見て思ったのは、まるで昨今の政治家の答弁みたいだなと。質問に真正面から答えずにはぐらかしたり、同じ回答を繰り返して、相手が呆れて質問をやめるのを待つという。言論や対話への冒涜だと思う。回答を見るに朝日新聞批判には問題がないと判断しているようだが、こんなはぐらかしを自分たちがしていたら、今後朝日が何かで同じような態度を取ったとしても新潮社は批判できなくないですか。

 抗議のスタンディングは18時からスタート。

主催は「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」代表で、本屋「よりまし堂」店主の岩下結さん(マイクを持っている方)

主催は「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」代表で、本屋「よりまし堂」店主の岩下結さん(マイクを持っている方)

 60人ほどが集まって交代でスピーチしました。スピーチの内容はまたYahoo!ニュースエキスパートで紹介しようと思います。

 新潮社の社員らしき男女が数人、建物前で立っていたので話を聞きに行ったら、1人は「警備です」と言っていて監視?なのかなと思いました。それ以外の、50代ぐらいの男性は何を聞いても「代表を通してください」の一点張り。それより少し若い男性は何もしゃべらず、「個人的な思いを持ってここに立ってらっしゃるんですよね?」と聞くと、20代ぐらいの女性は「私は夜風にあたりに出ただけなので〜笑」と。

 新潮社の中では心ある人たちなのかなと期待したんですが、うーん……。社員には緘口令が敷かれているって噂も。本当だとしたら言論の死ですね。

 メディアは東京新聞から女性記者が3人、生活ニュースコモンズの記者さんが1人いらした。

 スタンディングが始まる前から路上で配信をしている女性がいて、なんか変な感じだなと思っていたら、後から聞いたところによると差別的な発言で再生回数を稼ぐ系のYouTuberだったらしいです。途中で来た警察官5〜6人に囲まれていて、私は気づかなかったのですが参加者に絡んだらしい。差別でお金を稼げるシステムが出来上がってしまっている社会が本当に嫌だなと思った。これは新潮社に対しても言いたいこと。

#私が好きだった新潮社の本

 いいなと思ったのは、「#私が好きだった新潮社の本」「#新潮社は差別を認めてください」の試み。スタンディング現場では、参加者が手持ちの新潮社の本を持ち寄り、手放してOKの物については主催者が抗議文とともに新潮社に届けるとのこと(受け取ってもらえなかったら寄付に)。

※火がついているように見えるキャンドルは電気です

※火がついているように見えるキャンドルは電気です

 私はジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』(新潮文庫)を持って行きました。

 20代の頃から、何度引っ越ししても処分せず、本棚の一番いいところに置いていた本。大事な大事な一冊。特に「三度目で最後の大陸」という短編は、文学というものの奥行きと厚みを教えてくれた小説です。

 わかりやすい扇動の言葉(例えば親日とか反日とか)の対局にあるのが文学だと私は思っています。既存の単語だけではまだ表せない複雑な背景や機微があるからこそ、人間には文学が必要。それなのに、国内外の文学をたくさん出版してきた会社が、差別という易きに流れた。

 スピーチで、「新潮社の本は私の一部を作ってくれた(それなのにこんな差別の助長を……、という趣旨で)」と言った人がいて、確かに私もそうなんだけれど、今はそれも認めたくない気持ちがある。

未読の方にはおすすめしたいけど、新潮社だから今はそうとも言えない

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 さて、ところで。

怖い話してもいい?

 先日、という昨日、「京都でたまたまラジオ」のEp.11を配信しました。今回は、福山雅治のこととか、ジャパニーズホラーの話とかをしたんですけど、聞いた方から「13:47〜あたりの笑い声、誰の声ですか?」とご連絡がありました。

 この部分は私が話しているんだけど、私があることを言った後に女性の笑い声が入っている。たぶん私の声ではない。私以外の2人はおひろさんと佳太さん、どちらも男性なので、これはどういうことかなと……。

 んー! 良かったら聞いてみてください。ちょうど怖い話している部分でこれなので、結構ゾクっとした😂

▼こちらのEp.11です。SpotifyやApple Podcastでも聞けます。

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