たまたまレビュー#4 『セクシー田中さん』

田中さんと朱里のシスターフッド、田中さんを中心としたサンクチュアリ
小川たまか 2024.02.06
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たまたまレビューでは、書籍・漫画・映画・ドラマなどのレビューを思ったままに書いていきたいと思います。大体週末の午後に更新します。※今回遅れました、ごめんなさい🙏

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今回の漫画

『セクシー田中さん』(2018年〜/芦原妃名子)

読んだきっかけ

 報道でもSNSでもつらいニュースについてのコメントが溢れ、SNSをあまり見なくなった私の目にも入ってきた。原作を愛する人たちが、芦原妃名子さんが心優しい繊細な人だというのは作品を読めばわかる、とツイートしていて、読んでみたくなった。

 それから、芦原さんが生前のブログの中で「性被害未遂・アフターピル・男性の生きづらさ・小西と進吾の長い対話等」を、「作品の核として大切に描いた」と書いていて、性被害やアフターピルが、フィクション(特にエンタメ)の中でどんなふうに描かれるのかが気になる自分としては、読まなきゃ、と思った。

 さらに芦原さんは「漫画で敢えてセオリーを外して描いた展開」とも書いていて、セオリーを外した展開、ステレオタイプではないキャラ設定こそ我読むべき漫画、とも思った。

 以下、あんまり悲しくならないように、読んだ感想を書いてみたい。なるべくネタバレしないように気をつけますが、多少はあります。最初に書いておくと、読み始めて1分で涙腺崩壊しました。

アラフォーにとって

 いや、アラフォーにとってとか雑に括るの良くない。私にとって、若い女性の恋愛、あるいは将来への漠然とした不安が描かれるフィクションって、身に覚えがありすぎて過去のあんなことこんなことを刺激され過ぎて「ああああああ」ってなる。

 刺激が強すぎるんです、すべてが。若者の方が繊細で、歳をとるごとに鈍感になると思われがちだが(実際にそういう面はあると思うが)、歳をとってからの方が刺激のツボが多過ぎて「いいいいいい」ってなる、ことも多い。

 特に漫画って、現代のあらゆるエンタメの中で最も人の感情を揺さぶるコンテンツだと思う。文化としての成熟度がすさまじい。漫画家(&編集者)の鍛錬とそれを支持して購入する読者の良い関係、良い循環があり、それが大きなマーケットの中で、すごいスピードで行われていることが率直にうらやましい。感情を揺さぶられすぎるからうかつに手に取れない、というのが、女性漫画家の作品全般に対する今の私の想いです(というのはまた、別の話)。

 刺激のツボについて、少し具体的に行きましょう。

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