たまたまレビュー#54 『時には懺悔を』
シルバーウィーク、いかがお過ごしでしょうか。私はネットフリックスで『ダウンタイム』を一気見する勢いです。『SとX』も見たいと思っています。さて今回は、10日ほど前に見た映画『時には懺悔を』のレビューです。
【目次】
(0)あらすじ
(1)絶賛される理由
(2)中島監督への批判
(3)他の出演者の問題
(4)自分の偏見
(5)映画『月』との違い
(6)野呂佳代と黒木華が出てるよ
『時には懺悔を』は、『告白』『来る』などの中島哲也監督の8年ぶりの最新作。原作は打海文三による1994年に発表された同名小説で、打海は重い障害を持って生まれた次男を育てた経験からこの作品を書いた。
中島はこの作品を20年前から映画化したいと思っていたが、映像化は難しいと懸念され続け、撮り始めるまでに時間がかかったという。
作品の中では実際に重度の障害を持つ児童が複数人キャスティングされている。撮影にあたっては障害者ケア専門の理学療法士ら医療チームが常に待機し、万全の体制で挑んだことがパンフレットに記されている。
あらすじ
探偵の米本(佐藤二朗)が自身の事務所で何者かに刺殺される。米本は同業者からも評判がすこぶる悪く、調査で得た情報を使って恐喝まがいのこともしていた。
探偵仲間だった佐竹(西島秀俊)は助手の中野(満島ひかり)とともに調査に乗り出す。程なくして、米本が生前、ある父子家庭を調べていたことが判明する。その父子家庭では、重度の障害を持つ8歳の新(しんすけ)を、父親の明野(宮藤官九郎)がつきっきりで介護していた。
米本はなぜ、この貧しい親子を追っていたのか。佐竹と中野は、明野の家に盗聴器を仕掛ける。生活音や親子の会話を聞くうちに、二人は自分たちの家庭に思いを馳せる。中野には離婚して手放さなければいけなかった娘、佐竹には障害を持って夭折した息子がいた。そして二人は、明野親子の秘密に気づいていく。
(1)絶賛される理由
各界著名人が絶賛していると報道され、パンフレットでも折田千鶴子、稲垣貴俊、豊崎由美ら批評家が手放しの賛辞を送っている。
私も映画としてかなり出来がいいと思った。ただ、万人受けは狙っていない。暗いトーンが2時間続く映画であり、もちろんデートムービーではないし、ミステリーだからといってスッキリするラストがあるわけでもない。
『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『告白』『来る』など、老若男女から好まれる「エンタメ作品」を撮り続けてきた中島監督のこれまでの作品とは一線を画す。スクリーンから感じるのは、障害とそれを取り巻く社会に正面から向き合う覚悟である。
障害のある人と一緒に生きるのはどういうことなのか。障害児や、その親、きょうだいは不幸なのか。そんな問いを見る人に突きつける。
長らく映画化できなかった理由は、障害児をテーマにした映画は「ヒットしない」と予想されたから、というのもおそらくあっただろう。この社会では、不治の病で美男美女が死ぬ映画は「美談」になるが、障害はそうではない。
そして著名人たちの絶賛は、万人受けは決してせず、さらに生半可に扱えば必ず批判されるであろうこのテーマに向き合った監督ら製作陣への賛辞でもあるのだと思う。
私は映画を見て「泣いた」という感想は安直すぎて好きではないのだけれど、この作品については本当に見ながらずっと泣いていた。登場人物たちの懺悔の物語であり、どうしたって見る人にも懺悔を促す映画である。登場人物の誰かに感情移入しない人はいないのではないか。

『時には懺悔を』パンフレット
(2)中島監督へ批判
ただ、作品の前に中島監督本人への批判がある。
まず『時には懺悔を』は、中島監督の過去作での問題によって公開が1年2カ月遅れている。