たまたまな日々・4月22日(水)・23日(木)
京都駅のサンダーバードは0番線から出発する。
21日(火)は日帰りで金沢へ。遠方への出張で一番緊張するのは電車の遅延である。私は電車運が悪いのか、大事な取材のたびに電車が遅延するので、かなり余裕を持って家を出るようにしている。大阪で朝から取材があるときは前泊しちゃおうかなと思うほど、電車遅延を恐れている。
それでこの日も、やっぱりでした。京都から金沢まではサンダーバードと新幹線を乗り継いで行くのだが、京都駅に予定時刻の40分前に到着したところ、強風のためにサンダーバードが迂回運行していると。ホームで駅員さんが3分ごとにアナウンスしている。もうこの時点で心臓がバクバク。
私はなんでも楽観的なほうなのだが、電車の遅延だけはなぜか苦手で、心臓がキュウってなる。電車が遅れても大体の場合は間に合うし、もしも遅れたとしてもフリーライターがひとり記者会見や裁判傍聴に行けなかったところで社会にとってなんの影響もないよ、怒る上司もいないし、と考えればそうなんだけど、別のルートを考えなきゃ行けないかも?とか、乗り継ぎの新幹線のチケットはどうなるん?とか思うともう考えがまとまらない。
とりあえず落ち着くために、0番線のホームにあるカフェに入ってモーニングを食べた。バッグの中には家でにぎったおむすびがあるのに。
電車の到着は5分遅れだったが、ここから迂回運転をするために終点・敦賀駅には30〜40分遅れで到着するという。ホームでのアナウンスによれば、敦賀駅に着いてからの乗り継ぎの新幹線については電車内で案内するからそれを聞いて、とのことだった。
どうなることかと思い、電車内の放送を聞いた。聞き取れないといけないからスマホで録音までした(どうせ何回も言ってくれるのに)。乗り継ぎの新幹線はサンダーバードを待ってから出発するという。
え〜……。
何それめっちゃ優しい。め〜っちゃ優しい! 社会に感謝しながら、安堵してシートにもたれかかった。
で、金沢の現場に着いたのは、裁判が始まる2時間前。金沢駅から裁判所までの30分を歩く余裕さえあった。どんだけ早めに出てるのか。電車遅延についての私の保険の掛け方は半端ない。でもこれで良し。石橋は叩いて渡る。
・控訴審も実刑判決
実父からの性被害を実名で訴えた福山里帆さん。一審で実父(大門広治被告)は懲役8年の判決を受けたが量刑不当などを主張して控訴。その控訴審判決が4月21日(火)だった@名古屋高裁金沢支部(名古屋高裁の支部が金沢にあって、北陸の事件の控訴審はここでやる)。判決は控訴を棄却。これはまあ当然の判決ではあるが、判決内容がかなり良いなと感じたのは、実父からの行為が里帆さんにとって「極めて異常な事態」だったと言及し、一審判決を受けて「改悛の情が深まった」という実父の主張についても「改悛は見られない」と一蹴したこと。実父は、控訴審でも理不尽な主張を繰り返していた。
Yahoo!のエキスパートコメントにも書きました。
思い出すのは2019年3月の、性虐待無罪判決@名古屋地裁岡崎支部。あれも実父からの長年性虐待を受けていた長女、という事件で、継続的な被害で徐々に抵抗する気力を奪われていった点でも同じだった。しかし名古屋地裁岡崎支部の判決は、長女が実父の行為を拒絶できたこともあった事実から、彼女の状態が法律上の抗拒不能にあたるとまでは言えないという信じられないような判断をした。あの判決と今回の判決を比べて、こうも変わるものかと思った。
名古屋地裁岡崎支部の判決は高裁で逆転有罪となったが、あの無罪判決に声を上げた女性たちはネット上で散々叩かれた。SNS上の法クラたちもこぞってバカにした。
一転して、福山さんの事件を報じるYahoo!ニュースのコメント欄では、「懲役8年は短過ぎる」など、福山さんに心を寄せる声が圧倒的である。状況は違えど、性犯罪・性暴力について、世の中の反応は変わっていると思う。世論は刻々と変わり、些細な事情にも揺らされる。それは希望でもあり怖くもある。
判決後の記者会見で福山さんは、「懲役8年」について、警察や検察など「みなさんができる限りのことをしてくれた結果」だと理解を示した。現行法ではこれ以上の量刑が出ないことが彼女はわかっている。一方で「被害者心情としては……」と続け、「何年であれば納得できるのかは、答えはまだ出ない」とも述べた。相反する複雑な気持ちを言葉にすることに長けた人だなと思った。会見で記者の前で話すのは、その向こうにいる他の被害者に向けてメッセージを発することである。自分の一言が誰かを傷つけないように、気を配っているように見えた。
控訴審は被告人に出廷義務がないので、判決の場に実父はいなかった。実父が来ないことは直前になって知ったそうで、ホッとしたとも仰っていた。