たまたまレビュー#48 『市川房枝、そこから続く「長い列」』

今に続く方法論
小川たまか 2026.04.19
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・ちょっとしたこぼれ話 

 私はシスターフッド(女性同士の連帯)というものを信じている。友情、でもいいのだけれど、友情よりはもう少し面倒くさいもので、しかししがらみというほど抜き差しならないものでもない。その相手の土台の部分、根っこの部分を愛するということ、葉や花のかたちが日々によって変わっていっても、つながっている気持ち。そういうものを信じている。

 自分は高校時代の友人関係に、とても恵まれていたのだと思う。私は性格が良くはないし、明るくもない。けれどそういう人間の居場所がある学校だったし、くだらない虚勢を張らずにいられる大らかさがあった。小中学校の学級内ではあったヒエラルキーに満ちた空気というものがそこでは薄くて、せっかく同じ学校に入ったのだからみんな一緒じゃん、仲良くしようよ、という平和的なノリの方が優勢だった。

 学級名簿が男女別ではなくて(小中学校までは男女別で、当然のように男子が先だった)、男女混合だったのも良かった。あれは私に取って、自由の象徴だった。

 思春期の人間にとって、身体の悩みを明け透けに話せる友人がいるかどうかは大きい。私たちは笑いながら真剣に、生理やムダ毛やセックスや性暴力の話をした。成長してそれぞれの生活環境が変わっても、何年も会えなくても、つながっていると思える。あの時代は3年間しかなかったのに、大人になってからの10年よりも濃い。

 フェミニズムが何なのか、シスターフッドがどういうものか10代の頃は全然知らなかった。けれど、大人になってからフェミニズムと出会い、シスターフッドを知って、どこか懐かしい気がしたのは、根底にあの3年間があったからなのだと思う。流行の価値観は絶えず女同士を分断させようとする。その俗世から、あの校舎が、そして私たち自身の健全なバリアが私たちを守っていた3年間。

本日の一冊

▼『市川房枝、そこから続く「長い列」 参政権からジェンダー平等まで』(野村浩子/亜紀書房)

 戦前から婦人参政権と女性の地位向上を訴え、右左なく政治家に陳情を続けた。戦後は戦争への加担責任から公職追放を受け不遇の時期を過ごすが、60歳になってから無所属で立候補し金をかけない「理想選挙」で全国2位となる票を得る。生涯無所属で、1980年には87歳で全国区トップ当選。当時の女性誌では、読者が選ぶ好きな「女の顔」の1位に選ばれた。市川房枝の人生を、今に伝える一冊。

 著者が市川房枝のどの部分を評価していたのかが明確なので、読みやすい。著者が評価していたのは、その実務能力、データに基づく調査主義であり現場主義、目標のための柔軟な行動力、海外の情勢を捉え外圧をうまく使ったこと、その都度組む仲間の見極め方、などである。

 誰ももう一度市川房枝になることはできないが、彼女の方法論を知ってそのいくつかをそれぞれが取り入れていくことはできる。そのための一冊である。

戦前に婦人参政権がどのように反対されていたのか

 1945年の終戦でマッカーサーが5大改革指令を出し、その中に「女性の解放(参政権の付与)」が含まれていた。このとき、市川房枝は52歳である。

 市川が20代の頃から取り組んだ婦選運動は結局、敗戦による最大の「外圧」によって達成された、ように見える(実際は、その前に戦前から婦選に理解のあった幣原喜重郎内閣が閣議決定していた)。このときの心境はどのようなものであったのか。後世から「外圧」だと要約して解釈されることを、100%良しとは思っていないのではないか。それとも、そんなことは気にしていなかっただろうか。

 戦前、市川らの運動に対する反発あるいは冷笑は当然激しかった。当時の反対意見のいくつかが、本書には具体的に書き抜かれている。

「古来の良妻賢母主義に反する」「女子の本分ではない。女子の本分は家庭にある」「我が国固有の伝説、習慣及び歴史に背いている」(1921年の議会での議員発言)

「黄色い声をはりあげて赤い気焔を吐く」「婦選の猛者」(1924年の新聞見出し)

 女性の参政権に賛成する男性議員は、似顔絵にリボンをつけて揶揄された。

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