たまたまエッセイ 生活と実感

貯金が尽きそうな充実/恋愛と友達、ホームとアウェイのこと/占いと家族とこれからの理想
小川たまか 2026.09.06
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貯金が尽きそうな充実

 京都に来て5回目の夏だった。

 引っ越す前は2年だけ京都で暮らすつもりと夫に説明していた。2年なんてほんの一瞬だった。

 無計画な私とはいえ、貯金がいくらまで減ったら東京に戻ろうという計算はあった。しかしそのデッドラインはあっさりと過ぎ、そこからもさらにみるみると貯金は減っている。最低でも東京に帰る引っ越し費用だけは残しておこうと思っていたけれど、今やそれすら危うくなっている。

 「結婚しているフリーライターの女性って結局、夫の稼ぎで食べてる」と言った人がいるそうだ。まあ人は適当にものを言い飛ばすものであるけれど、そうやって嫌味っぽい言葉を聞いてしまうと「うちは違うんですけど」「しっかり自分で生計を立てようとして貧乏なんですけど」って言いたくなっちゃう。

 しかしそういうことを言うと今度は別の方向へ角が立つので、とかく人の世は生きづらいのであった。

 貯金の減りに反比例して、私の内面は日に日に充実している。

 子どもの頃からずっと猫と一緒に暮らしたかった。東京にいるうちはそれが叶わなかったので、京都に来て白猫の親子と暮らし始めたとき、こんな幸せなことがあっていいのかと毎日信じられない気持ちで寝た。

 3年目に、それまでの寒過ぎた部屋を出て新しい部屋に引っ越した。今度の部屋はベランダが広くて、私はそこにいろんな鉢植えを並べている。毎朝、毎夕の水やりが楽しい。最近になってウーパールーパーもジョインして、そうか私の望む生活って、生き物と一緒に暮らすことだったのかと納得がいった。45歳にしてようやく気づいた。

 子どもの頃、ムツゴロウさんの番組が好きだった。ドリトル先生シリーズも。私は広い王国を持てないし、動物の言葉もしゃべれないからって諦めていたけれども、自分の身の丈にあった生き物との暮らし方は確かにあるのだった。

 わりとゼロヒャク思考のところがあって、ヒャクが叶わないならいいやと諦めてしまったものがこれまでいくつもあるように思う。もったいなかったね。

 そういえば、内面の安定や幸せは仕事での成功とセットだとずっと思い込んでいた。けれどそうではなかったのも、また発見である。

 ただ、このままだと早晩貯金が尽きるので、最近になって焦ったように手を動かすようになった。でも、貯金やっべーなって思いながら猫、ウパ、植物たちと暮らす毎日は人生でもっとも充実しているのである。

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